刷毛目徳利を一輪差しに
吉村昌也 刷毛目徳利
刷毛目の徳利を一輪差しにして
庭の紅額あじさいを入れました。
箱には「刷毛目徳利」とあるので、間違いなく徳利なのですが
ちょこっと手折った身近な花に、とても合います。
この刷毛目の具合が夏の白雲のようで
花を入れて眺めていると、いつも思い浮かぶのが
『 白 雲 抱 幽 石 』(白雲、幽石をいだく)という
お茶席には、この季節におなじみの禅語です。
文字通り、深山幽谷に、巨石をも包み込むように
ゆったりと湧き出る白雲。
それだけで自然の幽玄さと豊かな時間を満喫できる気がします。
これは作者の寒山という禅僧が
「あなたは、どんなところに住んでいるのか?」と
尋ねられた時の答えとして、『寒山詩』のなかに出てくる句です。
しかし、禅語として言い伝えられているということは
もっと深い意味があるはず。
私なりに解釈しているのは・・
石のように頑な心も、
白雲はおおらかに、ありのまま抱いている、と。
「北風と太陽」のように、旅人の重いコートを
なんとかして脱がそうと(相手を変えようと)するのでもなく
不安や悲しみで硬くなってしまいがちな心も
ありのまま、そのままでいいんだよ、と優しく抱くように
認めていくのがいいんだ、というふうに感じます。
大好きな歌「白い雲のように」みたいに
まったりと、おおらかに人生を旅していけたら幸せですね。
ちなみに、この詩の終わりのほうで寒山は
『 虚 名 定 無 益 』(虚名、定め益なし)
名声(や、富など)は、まったく虚しくて無益だ
と、言っています。
梅雨も本格的、と感じる日々。
紫陽花は、湿度が高くなってくると
色が濃くなっていくそうです。
紅額(べにがく)は、咲き始めは真っ白で
雨が降るごとにどんどん紅色に染まっていき
花が終わる直前に深紅になります。
ちょっと悲しげな赤です。